株式会社スペースシフト、株式会社ハレックス、株式会社Tellusの3社は、気象情報をトリガーに衛星撮影を自動で指示する「生成AI衛星自動タスキングシステム」の実証実験を実施し、見事成功を収めた。
この取り組みは、気象情報と連動する生成AIを活用した衛星の自動タスキングとしては世界初(※スペースシフトしらべ)の実績であり、防災・減災分野における新たな活用モデルとして大きな注目を集めている。
自動で「どこを撮るか」を判断し、衛星へ指示
実証実験では、ハレックスが提供する気象警報アラート(今回は積雪情報)をもとに、スペースシフトが開発した生成AIがAOI(関心領域)を自動で設定。Tellusが開発したオンデマンドタスキングシステムを通じて、衛星に撮影指示が送られる仕組みだ。
2025年1月には、パスコ社のASNARO衛星による富士山地域の撮影に成功。その後、Axelspace社のGRUS衛星でも北海道・根室市周辺など、複数地域の観測が行われた。
今回は確認作業を含む半自動での運用だったが、今後は完全自動化も視野に入れているという。
災害発生時の「即応観測」への道筋
今回の取り組みが画期的なのは、「気象情報」→「AIが自動で場所を特定」→「衛星に指示」という一連のプロセスが、人手を介さずに自動化できる可能性を示した点にある。
災害時には「どこを撮るか」「いつ撮るか」といった判断が迅速に求められる。こうした即応性を実現できる仕組みは、地震・豪雨・土砂災害・積雪など、多様な自然災害への対応力を高める鍵となる。
経済産業省のプロジェクトにも採択、活用技術はAWSの生成AI
本実証は、経済産業省の研究開発事業「多種衛星のオンデマンドタスキング及びデータ生産・配信技術の研究開発」に採択されており、システム開発にはAmazon Web Services(AWS)の生成AIサービス「Amazon Bedrock」も活用されている。
今後は気象情報以外のトリガー(例えばSNS投稿や災害通報など)との連携も視野に入れ、より実用性の高い災害対応プラットフォームへと発展させていく予定だ。
実証を支えた3社のコメント
スペースシフト CEO 金本成生氏
「今回の実証実験の成功は、弊社のビジネス共創プログラムSateLabの取り組みとして、パートナー企業様との協業により実現できた大きな成果です。ハレックス社の気象に関する専門的な知見、そしてTellusやAWS、衛星運用会社の皆様のご支援により、気象情報をトリガーとした衛星観測の実用化への道筋を開くことができました。生成AIによる自動的なAOIの生成で災害時の自動タスキングが現実的となり、この技術は防災・減災分野における衛星データの活用を大きく前進させ、社会の安全・安心に貢献できると確信しています。今後も業界の発展に向けて、より一層尽力してまいります」
ハレックス 代表取締役社長 藤岡浩之氏
「スペースシフト社と企画段階から取り組んできた、気象アラート情報と衛星タスキングを連携させる画期的なシステムの実証実験に成功し、気象データと衛星データを組み合わせた新しい価値創出の実現可能性が示されました。今後も共同開発の取り組みを継続し、当社が保有する気象データ提供技術や気象予報士による知見、そして最新のAI技術を活用した衛星データによる防災・減災分野での新しいソリューションの創造に貢献してまいります」
Tellus 代表取締役社長 山﨑秀人氏
「弊社は、経済産業省の『多種衛星のオンデマンドタスキング及びデータ生産・配信技術の研究開発』の一環として、オンデマンドタスキングシステムの開発を進めてきました。オンデマンドタスキングシステムのプロトタイプを、スぺ-スシフト社及びハレックス社に実証頂いたことで、本システムが新しい衛星データ利用の可能性を広げることを示すことができました。今後は、本システムを社会実装することで、衛星データを活用した安心・安全な社会の実現に貢献してまいります」
地方創生・防災の未来を切り拓く「宇宙技術」
本取り組みが示したのは、単なる技術実証ではない。「気象と衛星、AIの連携」により、被害を最小限に抑える次世代の地域防災体制の姿だ。
自然災害に備えるための情報取得が、自動かつリアルタイムで行える時代はすぐそこにある。地方にこそ必要とされる「即応観測」の仕組みとして、全国への展開と社会実装が期待される。