GIGAスクール構想の内容と課題 教育現場は何が変わっていく?

GIGAスクール構想
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AIやIoTなどICT技術の発展と発達、そして社会への浸透が続々と進んでいます。主に働き手側の話が多いものの、教育現場にも同様の潮流が巻き起こっています。

以前から小中学校などでは情報の授業でパソコンを使用することはありましたが、最近では生徒各自がパソコンやタブレット端末をもち、それを活用した教育スタイルへと変化しています。

こうした取り組みが急速に進んだ背景には、文部科学省が推進する「GIGAスクール構想」がありました。この記事では、GIGAスクール構想について紹介します。

目次

GIGAスクール構想とは

文部科学省ではGIGAスクール構想について以下のように定義しています。

ひとり1台端末と、高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備することで、特別な支援を必要とする子供を含め、多様な子供たちを誰一人取り残すことなく、公正に個別最適化され、資質・能力が一層確実に育成できる教育環境を実現する。

GIGAスクール構想の「GIGA」は、「Global and Innovation Gateway forAll(全ての児童・生徒のための世界につながる革新的な扉)」の頭文字から取られたものです。

文部科学省が定義するように、GIGAスクール構想の目的は、学習活動の充実と、主体的および対話的で深い学びの視点からの授業の改善です。

そのため、パソコンやタブレット端末を使って授業をすることがGIGAスクール構想ではなく、これらの機器はあくまでも「手段」である点は覚えておきましょう。本質的な目的は、生徒それぞれに最適化された授業による学習環境の提供で、これからのSociety 5.0時代を生きるための術を身に着けてもらうことです。

GIGAスクール構想ではパソコンやタブレット端末の整備にあわせて、ネットワーク環境の配備も進めています。さらには、デジタル教科書やAIを使った学習教材、指導者向けの支援なども含まれています。ネットワーク環境の整備や生徒への端末支給にはそれぞれ国が補助金を出しています。

GIGAスクール構想の課題

GIGAスクール構想が始まったのはここ数年の話なので歴史は浅いものの、現時点での課題がいくつか浮上しています。ただし、ここから紹介する課題は「現状」における課題であり、GIGAスクール構想が一層浸透することで、大幅な解消もしくは改善、さらには別の一手が打たれる可能性は高いです。

端末の物理的トラブル(破損/紛失など)

たとえば、「学習で使っている端末を紛失してしまった」「うっかり破損してしまった」など、物理的な管理上のトラブルはどうしても発生します。これは小中学生だから起きる話ではなく、対象となる母数(人数)が多いので、さまざまなトラブルが発生する可能性を踏まえたうえでの話です。

タブレット端末はスマートフォンなどと同じように前面のガラスが割れてしまうこともありますし、パソコン端末も何らかの事象で不良を起こすこともあります。

自治体や学校によって、これらの物理的トラブルへの対処は異なるそうですが、いずれの理由であったとしても保護者負担として処理をする必要がある場所も存在するとのこと。修理補償などもコミコミで計上している自治体や学校もあるようですが、保護者への心理的負担となる可能性があるのも事実です。

家庭での学習環境

自治体や学校によっては、端末を自宅に持ち帰ることが可能なところもあります。しかし、そこで発生するのが各家庭のネットワーク環境の状況による差です。

インターネット環境が完備されている家庭であれば何も問題はないものの、家庭によってはインターネット環境がなかったり、ネットにはつながるものの回線速度が著しく遅く学習教材が使えなかったりする可能性があります。

こちらも自治体や学校によっては、モバイルWi-FiルーターやSIMカードを配布/貸与などをしているそうですが、このあたりの家庭環境にも左右される部分の課題が存在していることはたしかです。

ITリテラシー

まさに学校で教わることのうちのひとつですが、パソコンやタブレット端末が生徒の手に渡る以上、ITリテラシーへの教育は熱心に取り組まなければいけません。とくに、本来意図していない使われ方(動画サイトにアクセスする、アダルト系のコンテンツを閲覧する)なども考えられます。

しかも、学校での利用ならまだしも、自宅に持ち帰りこれらの行動をされてしまっては管理が難しいのも事実です。サイトブロックなどの手段もありますが、解除できる生徒にとっては簡単に解除される可能性もあります。

転校する際はどうするか

GIGAスクール構想ではある程度個別の学習状況に最適化させながら学べるメリットはあるものの、転校などで異なる学校に行った際の対応も問われます。たとえば、生徒ごとにアカウントを付与する際、そのアカウントを学校単位で紐づけるのではなく、区域や行政、都道府県単位など広く紐づければ転校してもデータを引き継いで継続して学習に望めます。しかし、学校を識別するアカウントを発行しているケースだと、転校時にアカウントを引き継ぐことはできないため、既存の学習状況を失う可能性が出てきます。

極端な話、マイナンバーなどに紐づけ、学習教材などは全国一律でアカウントを管理できるのが究極的な理想ではあるものの、さまざまな事情でこのような対応が難しいのも事実です。そのため、転校などの際の対処方法も考えなければいけないのです。

いまでこそGIGAスクール構想がスタートしてからしばらくたったものの、はじまった当初に転校生が出現するとなかなかに現場も苦労していた話もあったようです。

GIGAスクール構想を推進ことでのメリット

当然、ICT技術に触れながら、生徒それぞれにあった学習環境を提供できるため、このGIGAスクール構想によって得られるメリットは非常に多いです。

学習状況にあった機会の提供

これまでの授業スタイルでは、黒板などを使って30~40人の生徒が一斉に同一の内容を学ぶ一斉学習型でした。教える側としては効率的である一方で、教わる側の生徒それぞれでは理解度も異なり、その理解度に応じた対応は難しかったのです。

その点、端末がひとり1台あれば、生徒の学習状況に応じた対応が可能になります。学習内容に対する生徒の反応や考えを教員が理解し把握することで、双方向からの授業を展開できるようになるのです。

もちろん、生徒それぞれ得意不得意な科目・内容の理解もスムーズになり、生徒ごとに最適化された内容での授業を実現しています。

STEAM教育の理解度向上

科学、技術、工学、芸術、数学の5つの領域の教科での学習を実社会での課題解決に活かしていくための、教科横断的な教育を指すのが「STEAM教育」です。情報の活用や統合をして、課題の発見と解決につなげるための力を養う・育むことがこの教育の目的です。

各人に端末を配布して学習するGIGAスクール構想では、検索ツールによる情報収集能力の向上、分析ツールの活用、スライドやプレゼン資料の作成など、実社会でも役に立つ、そしてこれからの時代で求められるスキルを養えます。

また、さまざまなツールに触れておくことで、先端テクノロジーが身近なものになり、自然とAIなどを使いこなせる人材の創出にも繋がります。これはITやプログラミングなどにも通じる話です。

公平なアイデア発信の機会の提供

一斉学習の形では、生徒によって能動的・受動的な授業への参加姿勢に差が生まれています。たとえば、クラス内で発表するときや発言するときも、頻繁に同じ生徒が率先して前に出ていたというケースがありました。いいアイデアをもっていたとしても、うまく前に出られない生徒がいたのも事実です。

しかし、GIGAスクール構想ではアクティブラーニングという、グループディスカッションやディベートなどと、タブレットやパソコンを組み合わせることで、「発表する機会」と「発表の方法」を同時に誰もが学べて経験を積めるのです。

もちろん、全員が全員、前に出て話せる必要があるかと言われたらその限りではないものの、少なくとも既存の学習スタイルにはなかった価値提供のひとつでは間違いないです。

教員の負担を減らす

GIGAスクール構想は新しい取り組みなので、実施から数年経過した現在でも現場の苦労は絶えないと思われます。しかし、これは取り組みがまだ確立しきれていないことや、誰もが不慣れであるための事象です。

とはいいつつ、これまでの教育現場で発生していた業務が変わったり、減ったりしているのも事実です。たとえば、テストの採点などは自動化されている教材もあるようで、大幅に工数が減った話もあります。さらには、授業の準備やプリント作成、配布なども、デジタル化されるため比較的手軽になったともされています。

また、生徒の成績や出席状況などもクラウドで管理されるため、ほかの教職員との連携の簡略化や生徒やその保護者への連携も従来よりも容易になります。

大きく動いている教育現場

GIGAスクール構想によって、さまざまな学習スタイルに変化が起きているのは先に説明したとおりですが、たとえば、英語の授業におけるスピーキングの時間も変わっているそうです。

従来(筆者が学生のころ)は、ネイティブの先生が授業にきて、一斉授業のスタイルで会話/対話によるコミュニケーションを図っていました。しかし、最近では各生徒のパソコンやタブレット端末で、ネイティブの方とオンラインビデオ通話サービスなどを活用し、生徒それぞれでコミュニケーションをする授業もあるそうです。

学校側もこれまでの科目構成や学習スタイルでは実現できなかった、生徒に学んでほしかったことがスムーズに教えられるようになったという声もあります。

また、最近ではプログラマー/エンジニアといった職業が学生からも人気のため、そういった職業に就かれている方を特別講師として招くなど、生徒からの需要に合わせることも増えているようです。

教育現場が大きく変化し、よりよくなることで社会はそれ以上に変革を遂げていくことは間違いないです。

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