シビックテックの重要性 行政だけに頼らない市民によるまちづくり

シビックテック
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さまざまな課題が渦巻く「生活」において、行政や関連する企業だけですべての課題を解決するのは大変困難です。住民が感じている課題を行政側がすべてキャッチアップし、それに対する解決策を提案するのには膨大な時間がかかります。

そこでいま注目されているのが、市民の手でさまざまな課題を解決しようという動きです。そのなかでも、ICT技術を活用できる市民が中心となり、地域や社会課題の解決に向けて進む取り組みを「シビックテック」と言います。

この記事では、シビックテックについて紹介します。

目次

シビックテックとは

シビックテックとは、市民(Civic)とテクノロジー(Technology)をかけ合わせた造語です。市民がテクノロジーを活用して社会課題を解決しようとする動きを指します。

シビックテックの発祥はアメリカと言われています。当時の行政サービスがすべての市民を満足させることは困難だった状況から、サービス自体の構築は利用者目線の市民が手がけ、行政はそれらをつなぐプラットフォームを構築するといった、分担させることによる利用者・提供者の最適化を図る考え方です。

重要なのは、利用者である住民・市民目線でサービスなどを構築し、自分たち(市民・住民)が中心となって課題を解決していく動きである点です。スマートシティや地方創生の取り組みの多くは、行政や関連企業が旗振り役となり、住民たちに使ってもらえるように改善改修を続けています。シビックテックが大きく異なるのは、中心となるのが住民たちであることです。

実は日本でも大小さまざまなシビックテック旋風が巻き起こっています。とくに有名なのは、東京都が公開した新型コロナウイルス感染症の対策サイトでしょう。

新型コロナウイルス感染症が拡大した際に、東京都では「新型コロナウイルス感染症対策サイト」を公開しました。このサイト・サービスを開発提供したのは非営利団体「コード・フォー・ジャパン(Code for Japan)」です。

サイト構築におけるソースコードはGithubで公開し、多くのエンジニアから有益な意見が寄せられ、システムやサービスの改良や多言語対応につながったとされています。さらに、公開されたコードはオープンソース化され、東京都以外の自治体でも同様のサービス提供が可能になりました。

東京都での事例以外にも、石川県金沢市のCode for Kanazawaが開発したゴミの捨て方や捨てる日がすぐにわかる「5374.jp」は発祥の金沢市だけでなくさまざまな自治体が活用しています。北海道札幌では、幼稚園や保育園情報がマップに落とし込まれたサービスを提供している例があったり、千葉県千葉市では、公共インフラの課題やトラブルに対して住民がすぐに意見を寄せられるサービスを提供していたりします。

その地域に住む人・利用する人たちが主体となり、地域を良くしていこうとする動き……そのなかでもテクノロジーを活用して取り組むのがシビックテックなのです。

シビックテックの取り組みにはオープンデータが必要

シビックテックに取り組むには、当然ながら課題の抽出やデータの収集、データの分析、そしてサービス化への各種開発といったフローが発生します。とくに、地域課題や社会課題に関するデータ(数値なども含む)は自治体が所有しており、そのデータを公開してもらわない限り、シビックテックが巻き起こることは難しいです。

もし、少しでもシビックテックやそのほか第三者による課題解決を自治体が求めているのであれば、まずはオープンデータを公開することが最優先事項です。同時に、そのデータを扱いやすい形式にしているかどうかも求められます。

たとえば、人口などの数値データがCSVなどのファイル形式であれば操作しやすいのですが、それこそ画像ファイル化やpdf形式で公開している状態だと、その画像やpdfからデータを読み取る必要があるので手間がかかります。

そして何よりも、シビックテックは市民や住民に対して行政側が強制するものではない、という点も忘れてはいけません。あくまでも、地域や社会課題を行政に代わって解決する有志、ボランティアなどであるため、「うちの自治体内にはシビックテックを起こせる人がいない」と悲観するのはある意味でお門違いな悩みであります。

ただ、行政が取得しているデータに興味をもつデータサイエンティストたちは少なくないのも事実で、そういった方々のアイデアや思考はとても役に立つ機会が数多くあるともされています。

そのため、シビックテックを起こすためのオープンデータを公開することは前提として、たとえば行政が主となってアイデアソンやハッカソンなどを開催し、“シビックテックのきっかけを作る”といった行動を起こすのはおもしろい取り組みに繋がると思われます。

行政と住民の双方向の意見や考えを取りまとめることも重要

スマートシティなどまちづくりは、行政や企業だけでなく住民も中核を担って、全員で地域をより良くする必要があります。そのため、シビックテックに限らず、行政や企業、そして住民の意見を交換できる場の提供は、まちづくりにおいて非常に重要なポイントです。

また、あくまでもシビックテックはプロボノ(仕事で培ったスキルや経験を活かす社会貢献活動のこと)的意味合いが強いですが、シビックテックをきっかけにした雇用の創出にもつながる可能性があります。たとえば、プロジェクトに携わった人たちを、行政が企業につなげるなどです。

行政側としても、メリットは数多いです。なにより、住民が抱える課題をストレートに解決に導けるアクションなので、行政が先頭に立ちつつも住民の協力を仰ぎ、双方向でまちづくりを進めることで、全員が幸せに過ごせる社会を構築できるのではないかと思われます。

シビックテックを推進するうえで、行政には行政でしかできないことがあります。それがデータの収集です。課題があっても解決を導くためには、いくつかのデータや資料などが必要になるケースが多々あります。そのとき、公的にデータを集めやすいのはいうまでもなく行政です。

今後はたとえば、住民から特定の分野に対する課題を寄せられたとき、その課題の解決のために必要なデータを行政が収集し、オープンデータとして公開するといった動きも多数生まれてくるのではないでしょうか。

いずれにしても、地域を活性化させるには行政や企業だけでは到達は不可能に等しいです。住む人・使う人の協力や参画があってこそのまちづくりです。シビックテックはそんなきっかけのひとつです。しかし、あくまでもシビックテックは手段であり、シビックテックを起こすことを目的にするのはNGです。課題解決における方法のひとつとして行政側が手札に加えておくのは良いことであると思います。

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