地域移住のメリットとデメリット 自治体側が考慮すべきことは?

地方移住
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地方創生や地域活性化、さらには地域の過疎化解消をするためには、ほかの地域・・・主に首都圏から人を集める必要があります。

地域を盛り上げたい地方自治体側は、さまざまな手段で地域をPRをし、魅力を伝えます。ただ、ひとりの住民がその場所で人生を歩んでいく決断にもなる地方への移住は、そもそもどのようなメリットなどがあるのでしょうか。

この記事では地方移住について、住民目線でのメリットやデメリットを紹介し、行政としてどう考えていくべきかを解説します。

目次

地方移住とは

地方創生やまちづくりなどの界隈で使われる「地方移住」とは、主に首都圏に住む人がそのほかの地域に移住することを指します。イメージの多くは、都市部からいわゆる“田舎”と称される自然あふれる土地に行くことを想像する人がほとんどなのではないでしょうか。

国や地方自治体が積極的に移住を勧めるのには理由があります。まず挙げるのは「都心の人口一極集中を解消」するため。

現状、日本では主に東京都を中心とした首都圏付近に人口が多く密集しています。これは現状の国内の主力産業が情報通信業やサービス業などが核となっていることも要因のひとつです。たしかに都市部で生活している人にとっては、生活・仕事・移動・娯楽などさまざまな面で、首都圏以外の地域で暮らす人よりもメリットを得られているかもしれません。

しかし、人口が一極集中状態が続くと、今後来ると予想される首都直下型地震などの大規模災害が発生した際に、機能が集中する都市部が崩れると、国としての運営に支障をきたす恐れがあるのです。つまり、リスクを分散させるためにも地方へと人口を分散したいという狙いがまずあります。

そして次に「地域格差を埋める」という理由で地方移住を推奨している側面もあります。日本においては、過疎化と公示されている土地は全国の市町村の過半数を超えています。

過疎化とは人口が減り、その土地の企業も減り、税収が減ることで各種行政によるサービスを住民たちに提供できなくなる可能性がある土地を指しています。国内では多くの土地が過疎化となっており、このままでは、そう遠くない将来、さまざまな地域が廃れていく可能性があるのです。

そのため、地域へと人口を動かすことで、それぞれの地域を活性化させ地域ごとの格差を徐々に減らしていきたい狙いがあるのです。

ところで、この記事では“移住”という言葉を使用していますが、“引っ越し”との違いは何があるのでしょうか。具体的な定義は敷かれていないものの、地方創生などのテーマにおける移住の意味は、「その特定の地域に移り住むだけでなく、生活様式も変化する」といった言葉として使われることが多いです。

一方で引っ越しは、何か目的があって住む(≒寝泊りする)場所を変えるというように使われています。

要するに、生活自体を丸っと変える可能性があるものを移住と言い、住む場所のみを変えるのが引っ越し、というイメージです。ただこれはあくまでもわかりやすくした例なだけであって、就労先は変更せず、リモートワークとして地方から勤務するのも移住の定番パターンとして存在しています。

地方移住のUターン、Iターン、Jターンとは?

地方移住について調べていくと「Uターン」「Iターン」「Jターン」などの言葉を聞いたことがありませんか?

これらは移住先に関するパターンを分けたもので、移住する人とその移住先の関係を表したものです。

Uターン

生まれ育った場所から別の地域に移り住み、その後生まれ育った場所に戻り住むこと。

たとえば、北海道で高校生まで過ごしていた人が大学進学をきっかけに東京都内に引っ越し。その後、東京都内の企業で働いた後、しばらくして北海道の自分が生まれ育った土地に戻ることです。

Iターン

生まれ育った地域から、どこか異なる地域に住むこと。主に首都圏で生まれた人が地方へと移り住むことを指します。

たとえば、東京都出身の人が青森県で働き、住むというケースです。

Jターン

Uターン同様に、生まれ育った場所(主に地方)から、都内など首都圏に移り、その後、生まれ育った地域の近隣に住むこと。近隣の都市圏に住むことが多いケースです。

たとえば、宮城県名取市を出身とする方が東京都に引っ越し、その後宮城県仙台市に移り住むパターンです。Uターンと異なるのは、生まれ育った地域(場所)ではなく、その近隣に住むという点です。

これらのUターン、Iターン、Jターンといった用語に近しいものだと「ワーケーション」という言葉もあります。ワーケーションとは、主にリモートワークをする方に使われる言葉で、自然豊かな場所やリゾート地などで仕事をしながらリフレッシュをする、といった際に使われます。仕事(work)と休暇(vacation)を組み合わせた言葉です。

地方移住のメリットデメリット

東京都内から地方へと移住したことを前提に、地方移住で得られるメリットと、ちょっと不便だなと思うデメリット要素をそれぞれ紹介します。

地方移住をするメリット

通勤ラッシュなどの移動時のストレスがなくなる

東京都内と比べると地方のほうが当然ながら人口の密度も減るため、都内の通勤で利用する電車のような混雑とはおさらばできます。

また、都市近郊での環境でもすでにそうですが、都内と比べると通勤では自家用車等を使うケースが多いため、そもそも通勤で電車を使うという概念すら薄い場所も多いです。

物価が安い

東京都内と比べ、地方のほうが全体的に物価が安い傾向にあります。とくに顕著なのは家賃です。同等の間取りの賃貸物件を借りる際、都内と地方では2倍も差があります。当然、地方のほうが安いです。

物件以外にも日用品や食料などもリーズナブルな価格で提供されていることも。地域ごとに差はありますが、農業や漁業が盛んな地域では、その土地の特産品を都内に比べて安く手に入れられることも。

待機児童が少ない

東京都内でも随分と改善されつつあるものの、保育園などに預けられない待機児童は地方のほうが少ない傾向があります。また、都内に比べて公園なども多く設置されやすいため、子どもの遊ぶ場所が多いのも地方の特徴です。ただし、これらの点を含めても“子育てがしやすい”とは言い切ることもできないのは要注意です。

地方移住によるデメリット

就労先の選択肢が少ない

都内と圧倒的に異なるのは、その働き口です。生きていくためには働いてお金を稼ぐ必要があります。都内であればさまざまな企業があるため、給与の差や職務の違いはあったとしても、なんらかの形態で働けるケースは少なくありません。

しかし、地方では都内と比べると就労先が多くなく、また希望の職種を見つけづらいという話もあります。

買い物先や娯楽施設が少ない

就労先と同じように、買い物先や娯楽施設が少ないのもデメリットに感じる場合があります。徒歩圏内に一通りのお店が揃っていることが多い都内もしくはその近郊と比べると、地方ではすぐに手に入りづらいといったこともしばしば。

人を集める自治体側がやるべきこと

移住を希望する人のなかで、とくに気を付けるべきはIターンのケースです。要するに、不慣れな地域で暮らそうと考える際に、都内での暮らしとのギャップをものすごく感じることがあります。

また、物価が安いというのはメリットである反面、得られる収入が少ない可能性もあるので、結局は支出の割合はそこまで変わらない…ということもあり得ます。

裏を返せば、自治体や移住者を誘致されている方々はこれらの点をクリアーにする説明を事前にしてあげることで、移住欲を刺激させられるかもしれません。そのうえで、地域ごとの特徴をPRしていく、というのが綺麗な道筋です。

地方自治体などでは、たとえば「自然あふれる環境で過ごせる」などを押し出すのは多いものの、生きるためには収入が必要なのは日本全国どこにいても変わりません。つまりは、就労先やそれに付随する環境を適切に発信することが求められています。就労先がない土地に人を集めようとしても、リモートワーカーであれば集まるかもしれませんが、それ以外の場合だと見込みは薄いと思われます。

つまり、まず地方自治体側がやるべきは、就労環境を用意することです。とはいえ、雇用を創出するのは難しいので、サテライトオフィスなど、リモートで働ける場所の環境を用意し、企業を誘致するようにPRすることで移住者を募れるようになるのではないでしょうか。もちろん、農業や漁業などその地域に根付く産業への就労斡旋も正解の選択肢のひとつです。

いずれにしても、現状の地方自治体のPRでは、自然や環境、住みやすさなどをPRしているケースが多く、生きるために重要な本質部分の“働く”という点が推し切れていない部分があるのが課題です。逆に、移住者を多く募れている自治体では、このように働き先を提示していたり、その後のライフプランを描きやすくするなどの施策を張り巡らせています。

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